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HP「月と紅葉」の小ネタ受け皿。ジャンル雑多。
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<失くした記憶>

ガチャッ。

「・・・まだ起きているのか、ハルノ。」
「あ、父さん。すみません、この書類だけ終わってから・・・。」
「ギャングのや仕事だろう。忙しいのはわかるが、明日にしろ。
 眠りの不足は、命を削る。組織よりも、まずは己の身を何より優先させろ。そんな紙切れごときに、お前の命を懸ける必要などない。」
「・・・・大袈裟ですよ。」
「大袈裟なものか。お前はどうにも根を詰めすぎるところがある。
 万一無理がたたって過労で倒れでもしてみろ、しばらく館から一歩も出さんからな。」
「わかりましたよ。今日は、もう寝ます。・・・・・・・・・。」


 バシャァッ!!

「熱ッ・・・!」
「リキエル!手か!?見せてみろ!!」
「ごめ、ディエゴ、コーヒーこぼした・・・。」
「馬鹿!言ってる場合か!すぐに冷やせ!!」

キュッ、ジャァァァァァ・・・

「・・・よし。いいか、赤みが引くまで流水から手を離すなよ。今、氷をとってくる。」
「平気だって、こんくらい・・・。」
「火傷を甘く見るな。酷いものなら感染症を引き起こすことだってあるんだからな。
 いいから、しばらくそこでじっとしていろ。もし勝手に離れたら腕ごとペットショップに氷漬けにさせるぞ。」
「はいはい。・・・・・・ありがと。」


 心配してくれることが、嬉しくないわけじゃない。
 それでも、感じずにはいられない。
 二人の言葉の、その向こう側にいる存在のことを。

「・・・兄貴もか?」
「・・・リキエル、貴方もですか。」
 
 
 あの二人がかつて、僕らの知らない暖かいものをその身に受け、そして失ったのだということを。



無自覚ながら、根底に根付くトラウマ。
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